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手越くんの夢

みなさんこんばんは、Pです。

今日は私の見た夢について。

くっそつまんない夢だけど、なんだかとっても幸せでした。

多幸感あふれるあの感じが忘れられなくて、書かせてください。

 

 

私は売れてないフワフワの衣装を着たアイドル。

手越くんはもちろんスーパースター。

私と手越くんは付き合っていて、それはみんなが知ってること。

でも否定はしてるよっていう設定。

 

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彼は歌っている。気持ちよさそうに歌っている。

せつなさを感じさせるあの歌声。

私は、あの声に惹かれたんだ。

 

橘 貴子。客席の後部でじっと見つめている私は、なんだか思い出に浸るような気持ちで彼を眺めていた。歌に心を奪われている訳でもなく、どことなく心ここにあらずだった。彼は今、何を思って歌ってるんだろう、とふと思ったが、きっと私のような凡人には分からないだろうとすぐに考えるのをやめた。

 

歌が終わり、私は舞台裏に急いで向かう。出演者に花を渡すという一瞬で些細なことではあるものの、舞台上での私の役割があるのだった。彼は今、舞台裏にいるはず。会えるかもしれないと思ったのも急いでいる理由だった。

 

舞台裏への扉を開けると、彼はすぐそこにいた。手越祐也

「会えたね。」彼はそういって小さく笑った。

ああそうだ。この顔だ。彼が笑うと彼の周りが虹色に輝くように思える。

この顔が私の心を乱すんだ。

「会えたね。」私も彼の言葉を繰り返し、冷静な振りをして、そして同じように小さく笑った。

隅にあった小さなテーブルをはさんで、私たちは向き合って座った。

「何を考えてたの?」唐突に私は彼に聞いた。知ることはできないと諦めつつ、それでもやはり知りたかった。彼が何を考え、何を感じ、何を思って歌っているのか。

「なんだろね。貴子の事とか?」彼は簡単にはぐらかした。

「恋愛の歌じゃないのに?」真面目に答えてくれないことなんて分かっていたけど、なんだか悔しくなって口を尖らせてみる。

彼はぐっと顔を近づけてきた。急に顔が近くなって私は照れくさくなってしまう。

そんな私をみて彼はふっと笑った。寒く厳しい長い冬の終わりを告げる春風ような微笑みだった。

 

なんとなく見つめ合っていると、カメラを持った男が一人近づいてきた。

「週刊芸能です。お写真撮らせていただきました。事務所のほうに持ち込んだほうがいいですか?」言葉遣いは丁寧なものの、にやにやした感じの不快なしゃべり方をする男だった。彼は一度もカメラの男を見なかった。世界に存在しないかのように無視を決め込んでいた。私はちらっとカメラのほうを見て、怖くなって彼に助けを求めた。

「祐くん。まずいよ。」

彼は私の困った顔を見てため息をついた。そしてカメラ男には一瞥もくれずに言った。

「載せてくださいよ。俺ら、隠してないじゃないですか。載せて、それでもうほっといてください。」

その後カメラの男が私に聞こえないように彼だけに何か言ったようだった。

彼は不機嫌そうな顔をしていたが、彼も何か一言言ってカメラ男は去っていった。

 

私はしばらく動けなかった。彼が変な言い訳をしなかったことが何故だか妙に嬉しく思ったのだ。胸が幸せでいっぱいになって彼の顔を眺めていた。しかし、一瞬でその感情は消え去った。気がついたのだ。このままではまずい。彼とカメラ男は何かしら取り引きをした。この後必ず彼に災難が降りかかることは目に見えていた。

「祐くん。私、行ってくる。」

言うと同時に飛び出していた。彼がどんな顔をしているかも見なかった。

とにかくカメラ男を追わなければ。そう思った。

 

走る。走る。走る。長い廊下に他の出演者たちが出番を待っていた。

その間を私は走る。私はフリルのたくさんついたいかにもガーリーな衣装を着ていた。マネージャーからあてがわれた衣装で、私自身も気に入っていたものだ。

走っている間、なんだか自分に酔っていた。愛する男のために蝶のようにひらひらと走る私。周りの視線が私に集まっていることを感じた。手越祐也の女。私の肩書きは完全にそれだったが、アイドルとしての自分に特に期待していなかった私としては満足だった。

 

廊下を走っている途中に知っている顔を見つけた。ああ。あれは松本潤

私はエキストラのような一瞬しか映らない脇役で松本潤のドラマに出たことがある。

その縁もあって、なぜだか彼の顔がはっきりと良く見えた。心配そうな顔に見えた。

 

 

しかし今はカメラ男を追いかけなければ。

松本潤を素通りし、また走る。カメラ男は見つからない。

とそこに、高校のときの友人がたたずんでいた。そのまま通りすぎようとしたのだが、彼女が口を開いた。

「手越くん、今日歌ってたね。」

すこしはにかんで彼女は言った。私が付き合っていることを知っていて、話しかけてくれたのだろう。なんと答えればいいか分からなかった私は、ただ

「うん。」とだけうなずいて、彼女を後にした。

 

ああ。もうカメラ男は見つからない。もうだめだ。一度客席の方へ戻ろう。

そう思ったとき、ひどい眩暈が私を襲った。ここ最近は体調も良かったはずなのに。

立っていられないほどではなく、自分の足で歩けたので近くのベンチに座った。

頭の位置を低くしてめまいが収まるのを待つ。

ばかみたいだ。私なんかが手越祐也の人生に影響を与えることなど無いのだ。

あのカメラ男が何かしたとして、彼に被害が与えられるかもしれない。

しかし、手越祐也はそんなことで堕ちるような男じゃない。

彼は彼の人生を、全うするだけ。彼はいつでもどこでも黄金の輝きを放つ。

 

なかなか眩暈が治まらず、しばらくそこで頭を下げていると、あの声が聞こえた。

「貴子?」ああ、なんて優しい声。どうしてここにいるの。だめな男ね。

少し顔を上げた私の顔色を見て、彼は焦ったようだった。

「貴子?!どうした?!」焦った彼がたまらなく愛おしかった。なんて可愛い男なんだろう。私は彼を落ち着かせようと笑顔を見せたが、彼は余計に心配になったようだったので、その笑顔はひどい顔だったに違いない。

「大丈夫。ちょっと眩暈。少し走ったら血圧が下がっちゃったみたい。」

少し話しただけで息が切れる。こんな姿をさらしてしまうなんて。

彼は隣に座って肩を抱き、私の顔を覗き込む。

「横になる?」以前にも彼の前で同じような状態になったことのあるため、彼は対処法を知っている。

「いい。戻って。私はここで少し休んで治ったら戻る。」

本当に少しだが楽になってきていた。彼はじっと私の顔を見てパッとどこかへ駆け出していった。

 

私も戻らなければ。自分が抜けても問題ないことは知っていた。ただ、だからといって行かないというのは嫌だった。ゆっくり立ち上がると、すこしふらついたが、壁に手をつけばなんとか歩けた。

 

少し歩くと、また眩暈がひどくなってきて、その場にしゃがみ込みそうになる。

やっぱり今日はもう無理だ。マネージャーに連絡しなくては。そう思ってスマートフォンを取り出したが、目がかすんで画面がよく見えない。おまけに画面がやけに明るく感じ頭痛を誘発される。これはまずい。誰かに連絡しなくては。誰か。誰か。

 

つづく