小説 チョコレート④
橘 貴子
来週から実家を出て一人暮らしをすることになった。
佐々木さんとの付き合いは半年を越えてだいぶ落ち着いてきたように思う。
今は浮気の心配もなく、ただ二人でどこかへ出かけることが楽しい。
ただ、私は27歳。
そろそろ結婚したい年頃なのだが、
同い年の佐々木さんはそんなに意識はしていないように思う。
やはり結婚を意識させるためには家事ができることを見せなければと考えて、
一人暮らしを決心した。
今まで27年間実家で暮らし、家事もまともにやってこなかった私にとっては
一大決心である。
お金はかかるが、佐々木さんとの結婚のためには必要な出費だと考えている。
一人暮らしをするにあたり、やはりお金が必要となるため転職もした。
そのため佐々木さんとの職場恋愛は終了した。
特にバレることも無く、無事に終えることができてほっとしている。
こう書いていると随分と打算的な女となってしまったが、
佐々木さんが好きという気持ちは意外にもきちんと持っている。
付き合って半年経ったが、変わらずに温かい人だ。
いつも私の体調を気遣ってくれるし、デートの準備もきちんとしてくれる。
どうして佐々木さんがこんな私を好きでいてくれるのかは謎だが、
この人を逃したら私は一生結婚できないのではないかと思っている。
一人暮らしをして、そこに佐々木さんが遊びに来て、
徐々に半同棲のような形に持ち込みたいと私は思っている。
そのために、一人暮らしには少し広い1DK の部屋を選んだのだ。