体調不良小説 好きな人に癒されたい!

体調不良のときに癒してくれる彼氏を妄想。

小説 チョコレート⑥

佐々木健太

 

付き合っている彼女である橘さんが先週から一人暮らしを始めた。

お互い実家暮らしだったので、新しい楽しみができて

なんだかワクワクしている。

 

今日は橘さんの家で、家具を組み立てるのを手伝うことになっている。

橘さんに会うのは一週間ぶりだ。

橘さんは転職もして引越しもして大変な一週間だっただろう。

 

橘さんの家に着くと、いつもの笑顔で迎え入れてくれた。

ああ、この顔が好きだ。とても落ち着く。

将来、毎日この顔に迎え入れてほしいと妄想してしまう。

 

部屋に入ると、思わず橘さんを抱きしめてしまった。

華奢な彼女を抱きしめると、愛おしい気持ちがこみ上げてきて

なんとも幸せな気持ちになる。

 

そんな気持ちもつかの間、橘さんの様子がおかしい。

お腹を曲げて息が乱れて苦しそうだ。

「ど、どうしたの?」動揺して少し声が上ずってしまう。

橘さんはただ苦しそうで、こちらに体重をかけてきた。

体調が悪かったのだろう、会ってすぐに気づくことのできなかった自分に腹が立つ。

少しの間、そのままの体制でいた橘さんだが、

「ごめんなさい、ちょっとお腹痛くて」と小さな声で教えてくれた。

 

そういえば橘さんはちょうど1ヶ月くらい前に生理だと言っていたのを思い出し、

そういうことだと理解する。

 

「大丈夫?ちょっと横になる?」

辛そうな彼女に何もしてあげられない自分に歯がゆさを感じつつ、

できるだけのことはしてあげたいと思う。

 

「ううん、平気。いまちょっと波が来ちゃっただけ。」

橘さんは笑顔を見せてくれたが、顔色が悪く汗も浮かんでいるようだった。

とても平気とは思えない。

とりあえずベットに座らせてみるも、橘さんはお腹を抱えてかなり辛そうだ。

顔色も真っ青で息も乱れている。

男には分からない痛みと戦っている橘さんにひどく申し訳なさを感じる。

 

そんなときでも無理をして僕をもてなそうとしてくれる橘さんの健気さに

僕はときめいてしまっている。

橘さんがこんなに辛そうなのにときめいてしまってなんだか申し訳ないけれど。

 

しばらく腰をさすっていると、橘さんの呼吸がだいぶ落ち着き、

表情も少し和らいだようだ。

顔をあげてお礼を言ってくれた。

ああ、ぼくは橘さんが好きすぎる。

 

「少し落ち着いた?お茶は僕が入れるね。」

橘さんの顔を見ていると、好きという感情があふれ出てしまいそうで

思わず立ち上がり、キッチンへ向かう。

 

すると橘さんもゆっくりと立ち上がりついてきた。

「今日は私がおもてなししなきゃいけない日なの。」

といって僕がお茶を入れるのを止めてくる。

 

「そんな日はないよ。橘さんの体調が心配だよ。」

僕がそういうと、橘さんは嬉しそうに笑ってくれた。