体調不良小説 好きな人に癒されたい!

体調不良のときに癒してくれる彼氏を妄想。

小説 チョコレート⑧

佐々木健太

 

紅茶を淹れてマグカップを渡すと、橘さんは少し落ち着いた様子で

笑みを見せてくれた。

 

「なに?大丈夫なの?少しは楽になった?」

なんだかホッとして、僕も笑ってしまう。

「うん、ありがとう。」

橘さんはうなずいたけど、そのままお腹を抱えてしまった橘さんはやはり辛そう。

ダイニングテーブルに向き合って座っていたけど、椅子ごと移動して橘さんの横に座る。そしてまた腰をさすってみる。これでいいのかよく分からないのだが。

 

少し紅茶に口をつけた橘さんだけれど、すぐにマグカップをテーブルに置き、

眉間にしわを寄せている。じっと黙って耐えている感じだが、

なんだか先ほどよりも顔色が悪くなってきた気がする。

体もなんだか揺れているようだ。

ベットに移動させた方がいいかなと思ったところで、

橘さんが吐きそうなしぐさを見せた。

 

声も出さずに吐き気に耐えている様子の橘さんはかなり辛そうで

少しパニックになっているようにも見える。

「ト、トイレに。。」

焦ったようにつぶやく橘さんだが、うまく立ち上がれないようだ。

貧血なのだろうか、顔色も悪いし、トイレに行くまでもかなりの体重を僕に預けていた。僕はトイレの中までついていって背中をさすってあげたかったのだが、

そこは橘さんは嫌だったのか、トイレの外に押し戻されてしまった。

「向こうで座ってて。。」

聞いたこともない苦しそうな声で言われて、しぶしぶダイニングへ僕はもどる。

 

トイレで橘さんは吐いてしまっただろうか。

心配でいてもたってもいられないのだが、吐いているところを見られたくない

気持ちも少し分かるので、しばらく待つことにした。

少しの時間が永遠のように長く感じられ、心配で心配で

もういいだろうと、まだ出てこない橘さんの様子を見に行く。

 

小さくノックをして声をかけると、

橘さんがゆっくりと動く音が聞こえ、しばらくするとトイレを流す音が聞こえてきた。

そしてうつむいたままの橘さんがゆっくりと出てきた。

 

顔を見ようと覗き込むと、橘さんがふらついて、僕の胸にぶつかってきた。

慌てて抱きとめた僕だったが、うまく捕まえられず、ズルズルと橘さんはしゃがみこんでしまう。

 

「橘さん!?」

声をかけると、橘さんは色の無い顔で少し照れたように微笑んで

「大丈夫大丈夫。」とつぶやく。

まったく大丈夫には見えないのだが、意識はあるし反応もしてくれることに少し安心する。

「吐いちゃった?」と聞くと、橘さんはゆるゆると首を振り、

「今朝ちょっと吐いたから。もう吐くものないかな。低血圧だと思う。

ちょっとやっぱり横になってもいい?ベットまでお願いできる?」

 

顔色が悪いし呼吸も乱れてはいるが、しっかりとした口調で話す橘さん。

本当はすごく辛いのに、うまく対処できない自分に合わせてくれて

指示してくれているのが申し訳なく情けない。

 

「うんうん、少し寝たほうがいいよ。ベットまでいこう。。」

橘さんの肩を抱きゆっくりと立ち上がらせてから、ベットまで支えていく。

 

「うぅ。。」

ベットに横たわると、橘さんは苦しそうな声を出して枕に顔をうずめ

しばらくじっとした後、枕から顔をあげ、

「佐々木さんありがとう、10分だけ寝ていい?」

と聞いてきたので、僕は もちろん と答え、

側にいるべきか悩んだが、それでは橘さんが落ち着かないと思って、

「ダイニングのほうにいるね。苦しかったら呼んでね。」

といって側を離れた。