体調不良小説 好きな人に癒されたい!

体調不良のときに癒してくれる彼氏を妄想。

小説 チョコレート⑤

橘 貴子

 

一人暮らしを始めて一週間。待ちに待った週末。

職場も変わってクタクタな私にさらに生理という苦難が訪れた。

今日は佐々木さんが部屋に遊びに来てくれる予定だ。

 

組み立て式のダイニングセットをネットで購入したので、

その組み立てを手伝ってもらう予定で、

お礼に手料理を振舞おうと意気込んでいたのだが、

朝起きた瞬間に、腹痛とわずかな吐き気で絶望した。

 

生理痛は毎月酷いわけではないが、家と仕事が両方変わり、

環境の変化が体にストレスをかけたのか、どうやら今月は酷いようだ。

 

顔色の悪い自分は見られたくないのだが、それでも佐々木さんに会いたくて

体調のことは言わず、このまま佐々木さんが来るのを待つことにした。

もし佐々木さんに体調が悪いと連絡したら、

じゃあまた今度と言われてしまうのが怖いのだ。

 

ギリギリまでベットの中で過ごし、とりあえず腹痛に耐える。

佐々木さんに会うのだから、綺麗にしなきゃと分かっているのだが、

なかなかベットから出られない。

 

必死で腹痛に耐えるも、今度は吐き気に耐えられなくなり

あわててトイレに駆け込む。

少しだけ吐き、腹痛は治らないが、そのまま気合で身支度をした。

 

なんとか着替えてメイクを施したところで、佐々木さんがやってきた。

 

「いらっしゃい」体調がバレないように笑顔で迎え入れる。

「おじゃまします」と佐々木さんも嬉しそうにやってきた。

 

部屋に入ってすぐ、ハグしてくれる佐々木さん。

あたたかくて安心して心地よかった。

しかし容赦なく腹痛がやってきて、体制が保てない。

佐々木さんの胸に頭を押し付け、お腹をくの字に曲げてしまった。

 

「ど、どうしたの?」焦る佐々木さん。

私は一瞬声が出せなくて、佐々木さんに体重を預けたまましばらく黙ってしまった。

下腹がどうしようもなく痛み、泣きたくなる。

 

すこし経ってようやく

「ごめんなさい、ちょっとお腹痛くて」と小声でささやく。

このまま黙って過ごすのはもはや無理だった。

 

前回の生理の時期を知っていた佐々木さんは、

その一言で生理だと理解してくれた。

「大丈夫?ちょっと横になる?」

 

「ううん、平気。いまちょっと波が来ちゃっただけ。」

恐らく酷い顔色だと思うが、無理やり笑ってみた。

「ほんとに?無理してない?」

肩を抱いてくれてベットに座らせてくれる佐々木さん。

優しさが嬉しいのに、腹痛が喜ぶ余裕を与えてくれない。

 

座ったはいいが、まっすぐな姿勢が保てなくて

お腹を抱えて背を丸めてしまう。

ああ、こんな醜い姿、佐々木さんに見せたくないのに。

 

「来てくれたのにいきなりこんな状態でごめんね、お茶入れるね。」

とりあえず佐々木さんにお茶でも出さなきゃと思い、

力を振り絞って立ち上がろうとするが、腹痛がそれを許してくれない。

「うぅ。。」情けない声が出ただけで全く動けない。

どうしようと焦っているとさらに酷い腹痛の波が来る。

 

「だいぶ無理してるね」佐々木さんが隣に座って腰をさすってくれる。

温かくて気持ち良い。

そうしてしばらくさすってもらっているうちに落ち着いてきた。

「もう大丈夫。ありがとう」

顔を上げてお礼をいうと、

今日はじめて佐々木さんの顔をちゃんと見れて、幸せを感じた。